時は今



「由貴くん、これ」

 帰宅した隆史が、由貴にひらりと数枚の紙を手渡した。

「文化祭までの体育館の使用予定と当日の使用予定、あと校内での企画、全部通りました。あとは若干の変更がある場合はまた報告が欲しいそうです」

「──ありがとう」

 由貴は一枚一枚捲って決定事項を確認する。

 当日までの体育館の使用は、文化祭3日前までは運動部・演劇部・ダンス部の使用になるが、その後の2日は当日体育館で予定が組まれているクラスや部活のリハになる。

 当日の予定は、1日目が9時からは合唱部、10時からは2年F組…忍たちのクラスである。

「見た感じ、いいコマ割りになりましたね」

 隆史が言う。由貴は目を上げると少し微笑んだ。

「うん。前後に来るもので似たようなものが来ないようにメリハリをつけてみた。忍たちのクラスが歌劇風の内容だから、演劇部とは時間帯ずらしたりね」

 智たちの演劇部は午後の13時からである。ラストにバンド枠を組んでいる。その頃にはみんな弾けていてそんな空気で盛り上がっているだろうからだ。

「──そういえば、さっき揺葉さんのお父さんに会ったんですよ」

 不意に隆史がそんなことを口にする。椅子の背にもたれていた由貴が身を起こした。

「忍のお父さんに?何処で?」

「学校ですよ。近く文化祭がありますから、部外者が校内に許可なしに立ち入るのはと思って、話しかけてみたんです」

「どんなこと話してた?」

「四季くんと話したようなことを言ってましたね。揺葉さんのボーイフレンドなのかいうことを尋ねていましたから、四季くんが揺葉さんの彼女というふうには認識しているんでしょう。ボーイフレンド・ガールフレンドというと、恋人くらいのニュアンスですよね。英語圏では」

「外国に住んだことないからわからないけど。そう言うみたいだね」

「それで今、早瀬が直談判をしに会いに行っているんですよ」

 由貴の思考が一瞬止まり、隆史の言った言葉を脳裏でリピートした。

「って…直談判?何の?」

「揺葉さんをめぐって、親権についてとか…いろいろあるんじゃないでしょうかね」



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