時は今
「そう」
「お前的に委員長どうなの?そもそもお前あまり男子と話したがらないし。やっぱりそういう話すんのキツイか?」
それで涼はシンプルに綾川由貴と話していた時の空気だけを思い返す。
苦手──ではない。
自然に会話が出来ていた気がする。というより、兄の静和や父親以外で、あれだけ話せる男子は初めてかもしれない。
「…委員長も、お母さん、いないんだって」
涼はぽつりと言った。智は、そうなのか、という意外そうな顔になる。
どういう話をするのかと想像がつかなかったが、いきなりそういう深いところに関わる部分での共通点か。
「お母さんがいなくなってからピアノを弾けなくなってしまったこととか、そういうこと話してくれた。聞いていて何となく安心した。涼、委員長は好き」
さらりと涼の口から「好き」という言葉が出てきたことに、智は晴天の霹靂かと思う。
涼が男子についてそんなことを言うのは一度も聞いたことがないからだ。
ただその「好き」がどの種類の「好き」なのかは、本人も判っているのかどうか判然としないが。
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