時は今



 ホームルームが終わり、生徒がひとりふたりと帰りだす。

 吉野智が由貴に声をかける。

「委員長。朝の話だけど。涼に一応話してみたけど、委員長が話したいことなら大丈夫かもしれないぜ」

「え…。本当に?」

「ああ。あいつ、委員長は大丈夫なんじゃないかな。何か話していて安心したとか言ってた」

「…ありがとう」

 由貴は一瞬桜沢涼の方を見た。涼に気だるい表情が見られたので、今日は、と思う。

「今日はやめておく。桜沢さん、撮影で疲れているかもしれないし」

「気遣い屋ですな。委員長も」

 智はそんな言い方をするが、由貴のその気遣い方に好感を持っているようだった。

 四季に話してみよう。

 由貴は「また明日」と吉野智に言い、教室を出た。



     *



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