お見合い恋愛
ゆっくりと顔をあげると、ちょうど唯香さんも顔をあげ視線が合う。



「あ・・・」


唯香さんはすぐに照れくさそうに視線をはずしたが、今度は困ったような表情になった。




「あの・・・唯香さん、本当は恋人がいるんじゃないですか?」


俺は勇気を出して、でも当たり障りのない表現を選んだ。


「え・・・どうしてそれを・・・」


ぱっと顔をあげた唯香さんが驚いたような顔になる。


「あ・・・実はちょっと・・・」


どうごまかそうか考えあぐねていると、唯香さんはふっと微笑んで言った。


「ご存知なんですね、全部」

そう言いながら、湯気のたっているコーヒーを一口、口に含んだ。


「す、すみません・・・」

なんだか申し訳なくなって、コーヒーのカップを両手で掴んだ。

「いえ・・・いいんです。お話しなければいけないと思っていたので、良かったです」

唯香さんはカップをソーサーの上におろすと、ぽつぽつと今回のお見合いのいきさつを語り始めた。
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