お見合い恋愛
「実は私の母、不倫の末に私を身ごもって、相手の人と結婚したんです」



え?


今度は俺が驚く番だった。


「あは・・・見えない、ですかね?」


唯香さんのお母さんは、とてもおしとやかでうちの母さんとは正反対のように見えた。

いいところのお嬢さんで、とても幸せな結婚をしたんだろうな、というふうに見える。


「・・・でも、やっぱりうまくはいかなくて・・・だから、私に父はいないんです」



あぁ・・・だから今日も母親同士で・・・・なのか。


実を言うと、俺の家にも父親はいない。

離婚ではないけれど、10年ほど前に病死したのだ。



「それで、かな・・・私の結婚にすごく期待をしていて・・・」


なんだか少しだけ悲しそうな顔で唯香さんが笑う。


「・・・でも、恋人がいるのに、なぜお見合いをOKしたんですか」


「それ、は・・・・」


唯香さんはテーブルの上で組んだ手をもじもじと動かす。

今日はあの指輪ははめられていない。

母親に知られたら困るから、はずしてきたのだろう。
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