三日月の下、君に恋した
胸の奥が強く引っ張られるように、ひどく懐かしい心地がした。
その懐かしさの理由がほかにもまだあるような気がするのに、何なのかわからない。思い出せそうで、思い出せない。
母が隠していた秘密がここにある。
それは直感だった。
『三日月の森へ』の挿絵を描いたのは、千鳥という画家だった。そんな名前の画家は聞いたことがないし、姓なのか名なのかもはっきりしない。
日本画の裏に何か書いてあるかもしれないと思い、航は額縁を裏返して中身を取り出そうとした。そのとき、額縁の中にもう一枚、別の紙がおさめられていることに気づいた。
取り出してみると、古い画用紙だった。
愕然として、紙を持つ手が震えた。
それは、自分が小学生のときに描いた、拙い水彩画だった。
校庭の紫陽花を描いた写生画で、三年生の図工の時間に描かされたものだ。たしか県の写生画コンクールで銀賞をとったとかで、学校で表彰されたのをおぼえている。
母は褒めてくれたけれど、喜んではいないことを、当時何となく感じ取った。それから、学校の授業で絵を描くときは、なるべく適当に描くようにした。描いた絵はアパートには持ち帰らないで、帰り道でこっそり捨てた。
その懐かしさの理由がほかにもまだあるような気がするのに、何なのかわからない。思い出せそうで、思い出せない。
母が隠していた秘密がここにある。
それは直感だった。
『三日月の森へ』の挿絵を描いたのは、千鳥という画家だった。そんな名前の画家は聞いたことがないし、姓なのか名なのかもはっきりしない。
日本画の裏に何か書いてあるかもしれないと思い、航は額縁を裏返して中身を取り出そうとした。そのとき、額縁の中にもう一枚、別の紙がおさめられていることに気づいた。
取り出してみると、古い画用紙だった。
愕然として、紙を持つ手が震えた。
それは、自分が小学生のときに描いた、拙い水彩画だった。
校庭の紫陽花を描いた写生画で、三年生の図工の時間に描かされたものだ。たしか県の写生画コンクールで銀賞をとったとかで、学校で表彰されたのをおぼえている。
母は褒めてくれたけれど、喜んではいないことを、当時何となく感じ取った。それから、学校の授業で絵を描くときは、なるべく適当に描くようにした。描いた絵はアパートには持ち帰らないで、帰り道でこっそり捨てた。