キズナ~私たちを繋ぐもの~
「どうしよう」
寝たふりなんか、しなければよかった。
でなければ、あんな言葉聞かなかった。
聞かなければ、思わなかった。
……嬉しい、なんて。
上半身だけ起きあがり、彼が触れた唇を人差し指でなぞる。
体がゾクゾクと震えた。
結婚へのためらいの訳を、こんなことで自覚するなんて思わなかった。
『彼』への愛情。
『彼』と離れることへの恐怖。
結婚してしまえば、今の暮らしは無くなる。
私はそれが、怖いんだ。
どうしようもない感情に気づいて、体の震えが止まらない。
どうすればいいの。
『彼』は兄だ。
たとえ、血のつながりは無くても、
生まれた時から一緒に暮らしている兄だ。