キズナ~私たちを繋ぐもの~
『でも、達雄さんから愛情を感じるから、……だから忘れられないんだろ』
「そうかも知れないけど。お兄ちゃんの愛情は、家族愛だもん」
『本当にそう思ってんのか? 達雄さんは俺の事あんなに敵意のこもった眼で見てたんだぜ?』
「でも……」
『もうごまかす必要無いだろ?
俺とは別れたんだし。お義母さんだって亡くなった。障害なんて何もない。
……俺が駄目だって言うなら、達雄さんのところに行けばいい』
「お兄ちゃんは、多分紗彩さんと結婚するよ」
『綾乃?』
「お兄ちゃんにとって、私は妹でなきゃいけないんだよ。そしてお互いに別な幸せを見つけなきゃいけないんだと、そう思う」
『だったら、俺のところに戻ってこいよ』
「そんな虫のいいこと出来ないよ」
『……綾乃』
電話越しの彼の声が揺らぐ。
あなたでも、涙声になったりするんだと思ったら、なんだかおかしかった。
さっきの言葉が、ずっと抱えてたあなたの本音だったのかな。
一緒にいる間、私はずっと司の事が掴み切れないと思っていたけど、ここにきてようやく分かったような気がする。