キズナ~私たちを繋ぐもの~

 達雄が、司と約束をしたのはその週の週末だった。

連れてこられた場所は、入り組んだ所にあるバーで、店内にはピアノの演奏が流れていた。

達雄は行きつけの店なんだろうか。

なぜかTシャツ姿の店員さんらしき男性と軽く会話をした後、奥の席へと招かれた。

そこには、ダークブラウンのスーツを着た司が座っていた。

目の前のグラスは半分くらい無くなっているけれど、司はお酒には強い。
たいして赤くもなっていないし、実際酔ってもいないのだろう。

一年ぶりで顔を見る彼は、どこか引き締まって、だけど疲れたような顔をしていた。
目が合うと一瞬、時が止まる。

声を出すには少し勇気が必要だった。


「司。……元気だった?」

「……ひさしぶり。綾乃」


ようやく、彼が笑う。
私もホッとして、彼の向かいに腰をかけた。

すぐに達雄が私の隣に座る。
その途端、司は眉をひそめて、シッシッと犬でも追い払うように手を振った。

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