キズナ~私たちを繋ぐもの~
「1年前、『綾乃がいなくなった』って達雄さんが来てさ。
俺、電話で聞こえた駅名を覚えていたから、達雄さんに言ったんだよ。
『追う気があるなら教えます。そうでなければ自分で追いかける』って。
達雄さんが『行く』って言ったから教えたんだ。
だから、そう長くないうちに綾乃は戻ってくるんだと思ってた」
長い指が、グラスの水滴をぬぐう。
彼にしては珍しい、どこか落ち着かない仕草だ。
「なのに何の知らせもないだろ。怒って達雄さんを問い詰めたんだよ」
「そうなの?」
「そうしたら、『頼むからしばらくそっとしておいてくれ』って。
『綾乃は今自分を変えようとしてるんだ。だから俺も迎えに行ける自分になってからじゃないと行けない』って言うんだよ」
「達……お兄ちゃんが?」
「ああ。……正直俺には理解できなかった。俺だったら、何を置いても迎えに行くし、綾乃が嫌がっても連れてきて、迷ってる間に自分のものにする」
「……」
司は挑むような視線を一瞬向けた後、口元を緩めた。