龍神






自分の部屋へ近づくと、右側のボタンを押した



…本当は怖いけど

苦しいけど、イヤだけど。


でも大丈夫。



だってみんながいる。





あたしは一人なんかじゃないから






「…もしもし」


『真、南?』


「うん。なに…お母さん。今更、何のようよっ」


『お母さん、あなたに謝りたくてっ』


「謝らなくていい!!あたしには今居場所があるのっ!!またあたしから居場所を奪おうとするの!?」





お母さんの声が、あたしを苦しめる



あたしは自分の部屋の前で大声で泣いた





『真南っ、お願い戻ってきて』


「嫌だ!!」


『ね?居場所ならこっちで作ればいいじゃない』


「あたしはここ以外いらないもんっ」





こんなにいい所は他にはないから

こんな優しい場所は、どこにもないから



きっと世界中探したって、ここ以上の所は見つからないの





『…真南、お願いよ。我が儘言わないで』


「っ、お母さんにとって、あたしの言葉は我が儘なの…?」


『っ真南、帰ってきて!!なんでそれだけのことが出来ないの!?お兄ちゃんとのことは忘れるって言ってるのよ!?』


「言わないで!!」





お母さんの言葉があたしに昔を思い出させる



思い出したくはない

思い出したくはなかったのに




哉斗を忘れてしまいたかった



けど、忘れることなんて出来なくて








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