琥珀色の誘惑 ―王国編―
ラシード王子の説明によると、後宮にはいくつか抜け穴があるらしい。

確かに、襲撃された時にそういう逃げ道がないと不安だろう。四人の王妃の宮それぞれに抜け穴があり、その存在は国王陛下から、直接、各王妃様に教える方式になっている。

父が国王となり母が王妃となったのは、ラシード王子が十七歳の時のこと。

王宮で生まれ育った訳ではないので、本来ならラシード王子が抜け道の存在を知ることはなかった。

しかし、母ヌール妃の微妙な立場を鑑みて……国王は三人の息子に母の住む後宮への抜け道を教えた。

父は息子たちに、有事の際はどんなことをしてでも母の命を守るように言い渡す。



「それをこんな使い方してたんじゃ、陛下もお気の毒ね」

「それはっ! アルの目を覚ますためだ。陛下もお許し下さるに決まってる……」

「本当にそう思ってるの?」


舞に念を押されると、ラシード王子は更に背中を丸め俯いてしまう。本当の所はマズイことをしてしまったと思っているらしい。

だが、どうもそれだけでは納得できない。


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