琥珀色の誘惑 ―王国編―

(24)罪な花婿

白亜の王宮はやはり緊張する。

舞はそんなことを考えながらヌール妃の後宮の庭を散策していた。


王宮前広場や大広間、王族の執務室などがある場所は極々近代的なものだ。それらとは違い、正殿と呼ばれる場所や後宮に繋がる廊下、後宮内部や国王の寝殿などは歴史的建造物らしい。

他にも、宗教的な意味合いもあって、まだクアルン国民ではない舞が立ち入れない場所も存在した。


ちなみに、どうして正面側を中心に建て替えられたのか、というと。

なんと市民暴動! 前王太子に対する抗議のデモ隊が正門前で武装警官と衝突。集まった一般市民を巻き込み、一部が大型トラック数台を運転して正門を破ったらしい。
彼らは口々に、「マフムード王太子を排除せよ!」と叫び、王宮に突撃したとか。今から十年近く前だという。

国内では大騒ぎになったが、その年の秋に起こったアメリカの同時多発テロ事件に隠れ、アラブ国家以外ではほとんど報道されなかった。

舞が知らないはずである。

不幸中の幸いは、王族や一般市民から死亡者が出なかったことだ、とミシュアル王子は話してくれた。


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