琥珀色の誘惑 ―王国編―
ミシュアル王子の行為に、アル=バドル一族の男たちが歓喜の声を上げた。

彼らは広場の脇に下がり、ふたりに決闘の場を作る。


「敵? これは決闘だ。戦争ではない。私は……婚約者を奪ったお前に決闘を申し込む。お前が舞の夫になったと言うのなら、私はお前を殺し、舞を取り戻す!」

「正義は……私にあることをお忘れか?」

「だから何だ? ――欲しいものは力で奪う。シークとは最も強い男が与えられる地位だ。ヤイーシュ、そう言ったのはお前ではないか!」



砂漠の男たちは、一対一の決闘が始まれば決して邪魔はしない。

彼らにとって強さこそ正義だ。

ヤイーシュの挑発に、ミシュアル王子が剣で応じた以上、同じように抜かねば誰もヤイーシュを族長とは認めなくなる。


ヤイーシュもそれは充分に承知していた。

彼は、最早逃げ道はないと悟った。

口元を歪め、微苦笑を作る。そしてそのまま、腰に吊るしたジャンビーアを外した。右手で慎重に柄を握り、ゆっくりと引き抜いて行く。


朝もやが次第に晴れ、灼熱の砂漠が目を覚ます。


始まりの合図のように、太陽の光がテントの隙間から広場に射し込んだ。


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