琥珀色の誘惑 ―王国編―

(2)黒髪の誘惑

ミシュアル王子が颯爽と跨っているのは……なんと、ラクダ!

それもヒトコブラクダの雑種だった。王族が育てているラクダ、と聞けば血統書があるんだろう、と思っていた舞は驚きだ。


「ヒトコブとフタコブの間に作られた雑種だ。より立派な体躯を持ち、繁殖力も高まる。数代経ているので更に頑丈だ」


砂漠の周囲はさらに砂漠化が進んでいるという。この先、環境が厳しくなることを考えたら、そういった丈夫な種類のラクダが必要なのだそう。ちなみに雑種は全部ヒトコブになるらしい。

ただ、野生種や純血種が減る……ようするにフタコブラクダの絶滅なんて問題も出てくる。


「それもアッラーの思し召しだ。それがラクダであれ、人であれ、神の意思には逆らえない。無論、人間は最大限の抵抗をするだろうが――」


ミシュアル王子は目を細め、少し辛そうに答えるのだった。



コブの上に付けられた鞍に跨ると……ラクダって馬より乗る位置が高い!

この野営地まで乗って来た白馬に比べ、体高は五十センチ、体重は百キロも大きいんだそう。

でも、膝を屈めて「どうぞお乗りください」みたいなポーズを取ってくれたのには、ちょっと感動した舞だった。


「馬とは揺れが違うであろう? 辛くはないか?」


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