琥珀色の誘惑 ―王国編―

(14)せつない嘘

「きゃー可愛い。どうしたの? 迷子?」


舞はしゃがみ込み、子供の手を握って髪を撫でる。頬は幼児特有でプクプクしていた。深い青の瞳とアーモンド色の肌がお人形のようだ。

ヨタヨタでも歩ける様子から、一歳前後だろう。公務員宿舎のような集合住宅に住んでいたせいで、近所に小さな子供はたくさんいた。人種は違っても、この年頃なら動きや大きさに大差ないはずだ。


「まあ、どうして後宮のお庭に子供がいるのでしょう?」


単純に浮かれる舞と違って、シャムスは疑問の声を上げる。

王妃や側室などが出産間近または直後だと、こういった子供も見掛けるらしい。

乳母に選ばれた女性が、我が子を連れて後宮に入るのだそうだ。同じ時期に同じ母乳を飲んで育った二人は乳兄弟と呼ばれる。それは日本でいう乳兄弟とは違い、クアルンの法律では結婚を禁じられているほど実の兄弟姉妹同様に扱われた。

ちなみに、ミシュアル王子にとっての乳兄弟はターヒルだ。


「迷い込んだ? ……わけない、か」

「はい。それはあり得ません」


シャムスは真面目な顔で答える。

その時だ。


『ルナ様、どちらに? まあ、アーイシャ様!』「いえ……王妃様、申し訳ございません」


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