弟矢 ―四神剣伝説―
「おや、気がつかれましたかね、乙矢さま」


ビクッとして振り返ると、百姓姿の女が廊下の奥から歩いて来た。


「こ、ここは、何処なんだ? 弓月殿は無事なのか? それだけでも教えてくれ!」

「姫さんは一矢さまと一緒に、あちらにおられますよ。もちろんご無事です」

「そうか、一矢と……え?」


乙矢の表情が固まったことに気付かず、女は続ける。


「里の者は十二人も殺されました。でも、伝説の勇者さまが現れた以上、もう奴らの好き勝手にはできんでしょう。一矢さまが生きておられて本当に良かっ」


女の言葉を最後まで聞かず、乙矢はよろめきながら廊下を走った。


足がもつれ二度ほど転んだが、そんなことはどうでもいい。


灯りの漏れる引き戸の前に立つと、一気に開け放った。


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