弟矢 ―四神剣伝説―
神剣には鬼が宿る。

その鬼が、自身の柄に手を掛けた者の中から持ち主を選び、『神剣の主』と称され勇者となる。

だが、もし、選ばれなかった時は……。


手にした者を鬼と化す。


神剣の鬼は際限なく血を欲する。その波動は余人に抑えきれるものではなく……そうなれば、敵も味方もない。

徐々に人の心を失い、目の前にいる者を斬るだけの鬼となるのだ。



蚩尤軍の目的はその鬼を作り上げることだと凪は考えている。いや、すでに実用している可能性もある。もたもたしていれば、この宿場町に『青龍一の剣』を手にした鬼が送り込まれるだろう。


呵責も苦痛も持たぬ鬼。

戦闘用の殺人機械として使うには、なんと便利な存在だ。

だからこそ、伝説の勇者に顕現(けんげん)されては、奴らの計画は崩れる。


もし、喜多と皆実の血統がすでに絶えていた時、遊馬の弓月、正三、凪の三人と、爾志の一矢、乙矢兄弟を殺せば、勇者の血脈は絶える。

一矢を除く四人が集結しているこの状況は、甚だ危険としか言い様のないものだろう。

だが……これは偶然であろうか? 

乙矢の言い分は理解できないと、弥太吉はまだ不服を唱えている。その背後に、不穏な空気を察する凪であった。


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