弟矢 ―四神剣伝説―
彼の父、小弥太も師範代であった。

宗主とともに討ち死にし、弥太吉が母や弟妹を連れて、里へ逃げ延びた。その後、隠れ里を訪れた弓月一行に、強引に同行を願い出て……その執念に、とうとう根負けする。



「心に蓄えた勇気を、簡単に引き出せる者もいます。だが、弱さに負け、逃げ出す者もいる。弱いことは罪ではない。それを責めることも、戦いを強要することもできないのだよ」


凪は穏やかに諭した。


「それは……わかっています。おいらだって、商人や百姓の倅に、刀を取って戦えなんて言わない。でも、そいつは爾志家の男なんでしょう? 神剣を守護する四天王家の筆頭が、そんな腰抜けなんて……おいらには赦せない!」




神剣を守護する四天王家――『白虎』の爾志家、『朱雀』の皆実家、『青龍』の遊馬家、『玄武』の喜多家を指す言葉だ。


遥か昔、この国が外敵より攻められた時、国を護ったのが四天王家の祖先だという。彼らは四種五本の神剣を手に戦い、勇者と呼ばれた。

そして一つの伝説が生まれる。

いつかまた、この国が危機に晒された時に、彼らの子孫から、再び勇者が生まれる、と。



凪自身、その血を引く者として、子守唄のように繰り返し聞かされてきた伝説である。



しかし、これら神剣には、恐ろしいもう一つの伝説があった。


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