弟矢 ―四神剣伝説―
おきみはコクコクと肯いた。


「じゃあ、乙矢と一矢の見分けが付くのだな」

「おとや、おとや、おとやっ」


とにかく、乙矢の名前しか口にできないらしい。だが、これで決まりだ。


「では、おきみ。武器庫を襲い、里人を殺した下手人は、一矢で間違いないのだな」


おきみは、口を真一文字に結び、子供とは思えぬほど真剣な表情でコクリと肯く。


あの時、おきみは下手人を指差したのだ。だが、あまりに都合よく、乙矢がいなくなり……。そのせいで見事にすり替えられ、疑問を抱く前に、思い込まされてしまっていた。

まさか、真犯人が里人の前に堂々といるはずがない、と。

今思えば、乙矢が都合よく消えたのではなく、一矢がその機を狙っていたのだろう。


弓月の件は弟に対する嫉妬から、と大目に見てもいい。だが、これは違う。凪は気付いているかもしれないが、長瀬はどうだろう? それに、一矢は新蔵にも何か仕掛けたのではあるまいか?


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