弟矢 ―四神剣伝説―
「この役立たずめっ! これほどの人数がいてなぜ虫けら一匹が殺せぬ!」


武藤は拳を振り上げ、怒りを露わに、兵士らを殴りつけた。

楽勝、と意気込んで来たはずが、里跡は入り口すら見つからない。

次第に、兵士らは平静を失い始め、あちこちで小競り合いが勃発した。

武藤の苛々も募る一方だ。この状態で刀を抜けば、さしたる理由もなく、周囲の兵士を叩き斬るであろう。


挙げ句の果ては、遊馬の剣士を見つけたという報告と同時に、見失った……いや、また見つけた、と混乱の極致だ。

結果、為す術なく分断され、一人ずつ血祭りに上げられるだけであった。


更に、この時、武藤の怒りに油を注ぐような報告がされる。 


「武藤様っ! 鬼が目覚めます。ご命令を!」
 

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