弟矢 ―四神剣伝説―
それを、またか、という思いで見ていたのが新蔵だ。

風呂の焚き付けの如く、薪をくべ、程好く煽いでやらねばすぐに火が消える。炭になるまで燃え尽きるよりましかも知れぬが……。しばし逡巡したが、一緒になって悩んでいても埒は明かない。

新蔵は落ち込む乙矢を退け、正三とそれぞれの情報を確認し合った。

そして出た結論は――


「一矢の正体がなんであれ、奴は蚩尤軍と結託していることは間違いない! 一刻も早く、弓月様のお傍に参らねば!」

「わかっている。これは、私の想像だが、奴は神剣を持っている。恐らくは――『朱雀』」


新蔵は息を呑んだ。


「なんで『朱雀』なんだ? 盗んだのは『青龍』だろ? それか、あいつなら『白虎』を」


力なく俯いていた顔をサッと上げ、乙矢は正三に噛み付いた。


「鬼の声を聞いたお前にならわかるはずだ。勇者は常に試される。奴に『白虎』の鬼を抑える度量はない。だが『朱雀』なら……本物の勇者ですら鬼に変えるという裏切りの剣を持ってすれば、今の奴の行動に説明がつく」


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