弟矢 ―四神剣伝説―
「おい、乙矢! お前、またあのまま逃がす気か? どうして止めを差さな、い……」


また弱気が顔を出したか、と、新蔵は乙矢に近づいたが……そのまま息を飲む。


乙矢を取り巻く周囲の温度が違った。

暑い、ではなく、熱い。蒼い炎が乙矢を取り囲み、全身を包み込んでいる。それは、今にも燃え盛るような殺気を孕んでいた。とてもこれ以上は踏み込めない。『青龍一の剣』は今にも鬼に姿を変え、新蔵に襲い掛かりそうだ。


乙矢は正面を凝視し、何事か呟いている。


「うるさい……うるさい、うるさいっ! 俺は、貴様の思う通りにはならん!」


そう叫んだ瞬間――ブンッ! と『青龍一の剣』を一閃し、血糊を払い落とした。


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