弟矢 ―四神剣伝説―
『私も此処に残ります!』


三ヶ月前、乙矢が一矢に代わって……最悪、打ち首になるかもしれないと聞いたとき、弓月もそこに残ると言い出した。


「弓月様……しかし」


さすがの新蔵も大弱りだ。

弓月は強い心と固い信念を持っている。言い方を変えれば、頑固で融通が利かない。それだからこそ、十七歳の娘の身で人に縋ることもせず、気丈に戦い抜いて来れたのであろうが……。


「それに、凪先生もしばらくは動かせないと聞きました。私は大怪我をなさった叔父上を置いて、東国に戻るつもりはありません」


凪の腹の傷は相当深かった。三日三晩生死を彷徨ったが――余程生命力があるのだろう。意識が戻り、三日後には話ができるほど回復した。

だが、ひと月はこの地より動かせぬと、医者から言われている。  


困った新蔵が頼ったのは、乙矢だった。



乙矢の傷も深かったが、命に関わる程ではなく。彼は城内の離れに、六畳一間の部屋が用意され……半ば監禁状態だった。

会話までは聞かれることはないだろうが、濡れ縁を下りた庭には見張りの兵もいる。建前は、外敵から乙矢を守っているのだという。

もちろん、神剣はどれも乙矢の元から遠く引き離されていた。


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