吐息が愛を教えてくれました
千早は椅子の背に体を預けて心底嬉しそうな声をあげると、天井を仰ぎ、ふうっと呼吸を整えた。
「あの後、……実里が走り去った後、俺は急いで音々ちゃんに電話して、実里がそっちに行ったら連絡してくれってお願いしたんだ。
で、実里が音々ちゃんちで過ごした週末の様子は、逐一音々ちゃんから連絡が来てた。
だから、あえて俺からは電話もメールもしなかった」
「う、うそ……」
「ほんと。音々ちゃんはそんなに心配なら迎えに来いって呆れてたけど、いつかは実里が乗り越えなきゃいけないことだからって、しぶしぶ協力してくれたんだ。
俺が罪の意識からじゃなく、本気で実里を愛してるから側にいるっていい加減わからせてやってくれて怒られたよ」
苦笑した千早は、私への気持ちをこの際ちゃんと言おうと思ったようで、驚いて呆然としている私に構うことなく言葉を続けた。
「多分、いや、絶対。実里は俺が自分の人生を諦めて、そして罪の意識のみで自分に寄り添っていると誤解していただろう?それに気づいていながら、時間が解決してくれることに期待をかけて、自分の本心を言わなかった俺も悪いけどさ、実里だって、自分の気持ちをちゃんと言わなかった」
「そ、それは、だって、私は千早のことを縛り付けてばかりで、幸せにしてあげられないし」
「それって、誰が決めたんだ?」
「え?」
「俺の幸せは、誰が決めたんだ?」