吐息が愛を教えてくれました
「あ、でもさ、それだけ疲れてたのに、金曜日一緒に飲みに行ったんでしょ?」
「大変な実験が終わって、仲間との慰労会だから抜けられなかったんだよ。でも行ったのはいいけど、ビール一杯飲んで眠気には勝てず、すぐに帰ったよ。……あ、怪しまれる前に言っておくけど、俺ひとりで家までタクシーで帰ったから。そして、週末も部屋で眠り続けてたから勘ぐって逃げ出したりするなよ」
「に、逃げないよ……」
「どうだか。金曜日はあっという間に自分を追い詰めて逃げ出したくせに」
思い出すと、やっぱりいらっとくる。
あの時、私は千早が本当に好きなのはあの可愛い彼女なんだと思って苦しくて、逃げることしか考えられなかった。
それなのに、そんな私を追いかけずに飲みに行ったなんて。
「私に電話もよこさず週末を過ごしてたくせに、金曜日は楽しく飲んでたなんて。いい気分じゃない」
大きく息を吐き、千早を睨みつける。
結局私よりもあのかわいい女の子を選んだと思うと、本当、腹が立つ。
そんな私の様子を眺めていた千早は、何故か表情を崩して笑った。
「嫉妬に苦しんで怒りモード最高潮の実里の顔、この目に焼き付けておこうっと。
ここまで俺のことが好きだったなんて、夢みたいだ」