嘘つきな君からのキス
夕暮れに染まる帰り道。二つ伸びる影。
歩くのが遅い私に合わせるように、三神君もゆっくり歩いてくれているようだった。
いい訳なんてしない。正直に言おう。
ついつい、忘れてしまっていた。
「れーーうーー!」
「朱さん待って!!」
この二人の事を。朱が心配してくれていたことでさえ。
ちょっと薄情だなと反省しつつ。足音がする方に振り向いた。
瞬間。
「うっ!」
ガバッと抱きつかれる衝撃を受けて、ぐらっと足から崩れ落ちそうになるも、背中にもう一つ衝撃を受けた。
「仲村、逢坂熱あるからちょっと遠慮してあげて」
どうやら倒れそうになった私を三神君が支えてくれたらしい。
小さな声でありがとうとお礼を言うと、朱は抱きつくのを止めて首を傾げた。