ふたり。-Triangle Love の果てに


「おい」


ふいに下から低い声がして、私は飛び上がった。


「何やってんだ」


声の主はあの泰兄だった。


彼の持つペンライトの光が、まるでホタルのように私にまとわりつく。


「何やってんだって訊いてるんだよ」


彼の場所で、彼の秘密をこっそり見てしまった…


そんな罪悪感が湧き上がってくる。


きっと泰兄にも怒られる。


「降りてこいよ」


「…ない…」


「あ?」


「降りられない」


はぁ…そんなため息が聞こえた。


私はますます幹にしがみつく。


どうしよう、怒られちゃう。


もう何もかもが怖い。


「来いよ」


その声に恐る恐る下を見ると、ペンライトをズボンのポケットに突っ込み、両手を広げた彼がいた。


「そこから飛べ。受け止めてやるから」


「や…できないもん、そんなこと」


「いいからやれよ。そんなに高くない」


「いや」


「絶対大丈夫だって」


「いや」


チッと彼は舌打ちをした。


「じゃあ、天宮を呼んでくるしかねぇな」


「いやっ、怒られちゃう」


「ったく、どうすんだよ」


「……」


「なぁ、早く決めろよ。みんな腹減ってんのにおまえを探してんだ」


「ちゃんと受け止めてくれる?」


「ああ、約束する」


「…じゃ、飛び降りる」


「よし来い」


再び彼は両手を広げた。


でももし地面に落ちたらどうしよう、けがしちゃう。


痛いの、やだな…


「早く来いよ、天宮たちに見つかるぞ」


「……でも」


「いちにのさん、で飛べ。いいか、いち…にの…さんっ…」


泰兄のその声に背を押されるように、私は目をつぶったまま私は太い幹から身体を離した。


びゅうっ…と耳元で風が短く鳴った。


< 22 / 411 >

この作品をシェア

pagetop