ふたり。-Triangle Love の果てに
「…っつ…」
小さな彼のうめき声で、私はそろそろと目を開けた。
大きな衝撃の後、私たちはその場に倒れ込んだのだ。
約束通り、泰兄は私をちゃんと抱き止めていてくれた。
その胸から慌てて起き上がり見てみると、彼は仰向けになったまま頭を押さえていた。
「大丈夫?」
「ああ、なんともない。それより早くみんなのところに行けよ」
「でも…」
「このことは黙っててやるから」
泰兄が起き上がろうとする気配がない。
「行けって」
明らかにうっとうしそうにそう言う。
「うん」
ありがとう、本当はそう言いたかったのに…
私は一目散に施設から漏れる温かい光に向かって、走り出していた。
当然その後で、私は厳しく注意を受けた。
でも、どこで何をしていたかだけは言わなかった。
そんなことよりも、彼がどうなったかが気になって仕方なかった。
彼の姿がどこにも見当たらなかったから。
「真琴、聞いてるの?ちゃんと話さないと、明日から外出禁止よ」
頑なに口をつぐむ私に、女の先生は苛立った。
「まぁ、いいじゃないですか」
横からそう言ってくれたのは、施設長の天宮先生だった。
「この子が言いたくないのなら、それでもかまいませんよ」と私を叱っていた先生をなだめると、優しく微笑んで膝を折った。
目の前にある天宮先生の穏やかな瞳。
「真琴。何をしていたのかはもう聞かない。だけど、みんなおまえのことをとても心配したんだ。それを忘れてはいけない。みんなに感謝することも、無事だったことに感謝することも忘れてはいけない」
そうしてそっと頭を撫でてくれた。
「わかったか?」
「…はい」
「じゃあ、早く食事をすませるんだ」
それでもなかなか席を立たない私に、先生は「大丈夫だから、たいしたことない」って微笑んだ。
まるで何もかもお見通しのような言い方で。
私はわざとゆっくりご飯を食べ、最後まで食堂に残っていた。
泰兄がどうなったか知りたかったから。
天宮先生の「大丈夫」の意味が、その時の私にはわかっていなかった。
ずっと待っていたけれど、結局彼の食事はラップをかけられて冷蔵庫に入れられてしまった。