ふたり。-Triangle Love の果てに
次の朝、共同洗面所で上級生の女の子たちが話していた。
「泰兄ってば、また何かやらかしたみたいで、ここを切って診療所で5針も縫ったんだって」と左のこめかみをつついた。
「昨日の夕飯の時いなかったのはそのせい?」
「天宮先生、泰兄に甘くない?」
「でしょ?私もそう思う。でも、泰兄って苦手。何考えてるかわかんないし」
彼女たちの間をかき分けるようにして、私は洗面台で顔を洗った。
「その点、勇作兄は優しいし、かっこいいよね。ね、真琴、あんたはいいよね。あんな兄さんがいて」
何も答えられないまま、私は顔を拭くのもそこそこにその場を後にした。
胸が苦しくなった。
あの時、泰兄が頭を押さえたまま起き上がらなかったのは怪我をしたからだ。
きっと私を抱き止めてバランスを崩した時に、どこかに頭をぶつけたんだ…
鼻と喉の奥がジンジンしてきた。
「おはよう、真琴」
階段ですれ違ったお兄ちゃんが、笑顔で顔をのぞきこんできた。
「どうした、気分でも悪いのかい?顔色がよくないな」
「お兄ちゃんは泰兄と同じ部屋、でしょ?」
「そうだけど、なんで?」
「…う…」
我慢していた息がひとつ漏れると、もう後はどうにも止まらなかった。
うわあぁぁぁぁん…
突然泣き始めた私に、お兄ちゃんはびっくりしていた。
お兄ちゃんに全てを打ち明けた。
泰兄の怪我は私のせいなんだって。
私を助けようとしてくれたのに、みんなからは悪く言われてるって。
するとすぐに優しく笑ってこう言ってくれた。
「わかったよ、真琴。お兄ちゃんから泰兄にちゃんと話しておくから」
そしてしゃくりあげる私を見て、諭すように付け加えた。
「でも、真琴からもちゃんと泰輔兄さんにお礼を言わなきゃいけないし、謝らなきゃいけないよ」