ふたり。-Triangle Love の果てに
呼びに行くまでもなく、血相を変えた店長が駆けつけてきた。
「お客さま、お客さま。この者が何か」
「このガキが灰皿を片付けたせいで、当たりが出なくなったんだよ!」
「はい?えっと、おっしゃっている意味がいまひとつ…」
店長も当然の反応を示した。
だが、男はそれでも続ける。
「俺はああやって散らかさないと集中できねぇんだよ!3時間かけてやっとこれからって時によぉ。この台にかけた金、返してもらおうか」
「お客さまそれは…」
店長もうつむきながら、口を隠すように鼻を触っている。
明らかに口元がバカにしたように歪んでいた。
「ちなみに3時間でおいくらお使いに?」
「10万」
俺と店長は顔を見合わせた。
「ですが、お客さま」
「払えねぇって言うのかよ!」
巨漢男は腹の肉を波立たせながらわめき、近くの椅子を蹴り倒し始めた。
「金を返せ!」そう叫びながら。
他の客も横目で様子を伺いながらも、レバーを握る手はそのままだ。
「おい、クソガキ!おまえのせいだろうが、おまえが払えよ!」
払うわけないだろ、な、店長。
俺は同意を求めるように店長を見ると、彼は渋い顔のまま頷いた。
早く騒ぎを収めたかったのだろう、それで事が済むなら仕方ないだろ、そういう目をしてまた頷いた。
店に責任はない、おまえのミスだ、そう言いたげだ。
冗談じゃない!
こんなくだらない理由で俺の給料から10万も引かれたら、生きていけない。
「払えません」
俺は言った。
「10万なんて金、俺にはありません」
「あ?なかったら前借りしろ、前借り」
「だいたいおかしいでしょ、こんなこと」
反論する俺の頭を、店長は無理矢理つかんで下げさせた。
「申し訳ございませんでした。今後このようなことがないよう、厳しく指導いたします。10万円もお返ししますので、今日のところはどうか」
「ちょっと待てよ…!」
俺が店長の手を振り払った時だった。
「店長」
低くて柔らかな声が、滑り込むように俺たちの間に入ってきた。