ふたり。-Triangle Love の果てに


「あら、かわいいバルコニー。ガーデニングが趣味なんですか」


何気なく窓の外に目をやった彼女は、色とりどりの花に誘われる蝶のようにバルコニーへと近付いた。


初めて植えた花、サフィニアも元気に咲き乱れている。


それを機にすっかりガーデニングの虜になった私は、暇さえあれば園芸店に足を運ぶようになっていった。


サフィニアやペチュニアといった小花はもちろん、クレマチスやアイビーといったツル性のものから、ミニトマト、ブルーベリー、サボテンや多肉植物までいろんな鉢を並べている。


鉢を置く棚だって手作りした。


木材を買ってきては慣れない手つきで釘を打ったし、やすりもかけてペンキも塗った。


泰兄は一度も手伝ってくれることはなく、汗をかきながら作業する私を笑いながら見ていた。


「ジャングルにはするなよ」って言いながら。


とにかく自慢のベランダガーデニングを褒められて、悪い気はしない。


友達を招くことを泰兄から禁じられていただけに、こうして第3者からそんな言葉を聞くとうれしくて仕方なかった。


「すてきね、こういうのってセンスがないとできないものね。私には絶対無理だわ」


「まだ始めたばかりなんですけど、もう楽しくて…」


「でしょうね」


そして視線を窓の外に移したまま、翠さんは何の前触れもなくこう言った。


「私ね、彼と結婚します」


「結…婚?」


お兄ちゃんと翠さんが?


あまりに突然のことで、言葉が出てこない。


「プロポーズされました。もちろん私はオッケーしたんです。近々私の両親にも会ってもらいます」


振り返った彼女の顔は幾分か強ばっているように見えた。


「それで、真琴さんにお願いがあるんです」と言ってから一呼吸おいた。


「勇作さんと仲直りしてもらえませんか」


うつむく私のもとに歩み寄ると、翠さんは膝を折った。


「どうしてあなたたち兄妹がこうなったのか、私にはわかりません。でも彼はずっと真琴さんのことを気にかけてて…。私がでしゃばることではないのかもしれませんが…」と彼女もうなだれた。


私だって、お兄ちゃんと以前のように仲良くやっていきたい。


だけど、そう簡単にはできない理由がある…


それを翠さんは知らない。


「私たちの結婚を祝福してほしいんです。だってあなたは義理の妹になるんですもの」


「それはもちろん祝福します。だってたった一人の家族が結婚するんですから…」


「だったらお願いします、私のためにも勇作さんと仲直りしてください」


「翠さん…」


この手をつかむ彼女の手が、思ったよりも冷たかった。
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