ふたり。-Triangle Love の果てに
次の日、Yesterdayの仕事を終えて昼過ぎまで眠っていた私は、けたたましい着信音で夢から引き戻された。
手探りでその音を探す。
いつもは泰兄が眠っている場所。
そこまで手を伸ばしてみるけれど、冷たいシーツの感触だけが伝わってくるだけ。
ああ、あの人は出張で香港だった…
指先に触れた端末をなんとか引き寄せると、かすむ瞳の中で通話ボタンを押した。
「…は…い、片桐です」
寝起き一番の声はどうしてもかすれてしまう。
電話の相手にはきっとさっきまで寝てたことがバレてる。
『あのぅ…真琴さん?』
その声で、今にもまた夢の中へ逆戻りしそうだった意識が完全に冴える。
「あ、えっと、翠さん?」
がばっと起き上がり、ちらりと時計に目をやる。
午後12時を少し過ぎたところ。
『ごめんなさい、寝てた?』
「いえ、起きてました」
咄嗟に出たあからさまな嘘に、思わず自分で苦笑してしまう。
翠さんも「よかった」と答えてくれたものの声が笑っていた。
「お身体の具合はいかがですか」
『ええ、すっかり良くなりました、ありがとうございます。でね、急で申し訳ないんだけれど、今夜食事でもいかが?勇作さんからね、真琴さんは日曜日はお仕事お休みだって聞いてたものだから。昨日のお礼もかねて』
「お礼だなんて…」
『迷惑?』
意外と押しの強い人だとは思ったけれど、少しも威圧感がない。
敬語を使ったかと思いきや、すぐにうち解けた口調にもなる。
そのギャップに、親しみを感じる。
まだ出逢ったばかりだというのに。
きっとこれが翠さんの持って生まれた性格なんだろうと思う。
「今夜、ぜひご一緒させてください」
『決まりね』
その口調に、電話向こうの意志の強そうな目を思い浮かべた。
少しくらい強気なところがないと、お兄ちゃんを引っ張っていってくれないだろうし、と妙に納得しながら、待ち合わせの場所と時間を確認して電話を切った。