ふたり。-Triangle Love の果てに
翠さんと約束した場所の手前で、勝平さんと別れた。
別れた、と言っても離れた所から私を見守っていてくれるのだけれど。
待ち合わせ時刻の15分前。
彼女はもうすでに来ていた。
凛とした立ち姿に、周囲の男性の目が彼女に釘付けになる。
「お待たせしました」
その斜め後方から声をかけると、華やいだ笑顔が私を迎えてくれた。
「ごめんなさいね、急に呼び出したりして」
「いいえ、私ももう一度お目にかかりたいと思っていたところだったので」
「うふふ、よかった」
目尻の涙ぼくろというものが、こんなにも魅力的だなんて翠さんに出会うまで知らなかった。
「行きましょうか」
彼女が連れていってくれたのは、こじんまりとした店構えのオーガニック野菜を取り扱うレストランだった。
「勇作さんがね、ここは健康志向の女性に人気があって、おいしいって教えてくれたの。値段もお手頃だしって」
なるほど、若い女性が店の外にまで列をなしている。
けれど、翠さんはそれに並ぶこともせずに颯爽と店内へと入ってゆく。
「彼ね、以前ここを取材したんだって。だからちょっと連絡を1本入れてもらえば、ほうら…」
視線の先にあるテーブルには「予約席」と書かれたプレートが立っていた。
「これこそまさしく職権濫用、ってやつかしらね」
片目をつぶって、翠さんは笑ってみせた。
そうだった…
お兄ちゃんは仕事柄、女である私よりも女性が喜びそうな店やスポットを知っている。
どういう雰囲気の店が人気だとか、どんなサービスが女心をつかむのかも熟知していた。
「確かに、こういう店を探し出すには兄の得意分野です」
納得したように頷く私に、彼女は向かいの席をすすめた。
白いテーブルクロスの上に、淡く青みがかったグラスが2つ置かれる。
ランチメニューを2人前オーダーすると、「さてと」と翠さんは座り直してから昨日のことについて改めてお礼を言った。
「ところで、真琴さんはバーテンダーのお仕事をされているんでしょ?かっこいいけど、大変よね。男社会だものね」
「ええ。その上、昼夜逆転の生活です。幽霊みたいですよね」
くすくすと笑い合う私たち。
特におかしなことなんてないのに、なぜか親しみを込めた笑みをお互いに向けていた。