ふたり。-Triangle Love の果てに
~相原泰輔~
マコから勇作の婚約者の話を聞いたのは、俺がプライベートバンク「アペルト」の高雄と共に香港から帰国してしばらくしてからだった。
勇作に関することを俺に話すのは気が引けて、なかなか言い出せなかったらしい。
「とっても素敵な女性なの」とまるで自分のことのように嬉しそうなマコだったが、俺はにわかには信じられなかった。
勇作がそんなに簡単にマコをあきらめられるわけがない。
その婚約者という女の思い込みか、それとも何かの企みがあってのことか?
墓地で勇作が言い放ったことを、俺は忘れてはいない。
『金輪際、俺はためらわないし迷わない。そして立ち止まらない』
どんなことをしてでも俺たちを引き裂いてみせると言ったあいつの目は、本気だった。
「翠さんがね、泰兄にもぜひ会いたいって言ってるの」
そう言いながら、おかわりは?という目で手を差しだして首を傾げる。
「いや、今日はもういい」
箸を置くと、俺は手を合わせた。
「ごちそうさま」
「ね、今度ここに翠さんを呼んでもいいかしら」
勝平からの報告によると、気分の悪くなった北村翠に声をかけて以来マコは何度か彼女と連絡を取り合って会っているようだった。
「俺がいるときならかまわない」
「その時なら彼女に会ってくれるの?」
「気が向けばな」と明言を避け、俺は食器をキッチンに運んだ。
北村翠。
中央新聞社の記者か…
その点が気になった。
「その勇作の婚約者は新聞社では何を担当してるんだ」
「さぁ、そこまでは。お兄ちゃんと知り合った時は地域部だったって言ってたけど。そんなこと根掘り葉掘り訊けないわ」
暗に「あなたが圭条会の人間だってこともごまかしてるんだから」と、含めたような言い方だった。