ふたり。-Triangle Love の果てに


泰兄を見た。


この後、あなたはこの人と過ごすの?


そういう関係なの?


胸が締め付けられるように痛む。


本当にこの人と…?


私の視線に気付いた彼が顔をあげた。


目が合う。


そして笑ったの、微かに。


私は目の周りが熱くなるのを感じて、慌ててバックバーに目をやった。


背後から聞こえる彼女の甘い声。


息をするたびに、この胸が大きく上下した。


動揺してる、私。


完全に動揺してる…


ギャルソンエプロンをぎゅっと握りしめた。


バカみたい、私。


ちょっとばかり泰兄と近付けたと思って、いい気になってた。


だいたい彼の何を知ってるというの。


何も知らないじゃない。


どうかしてる、こんなことで胸が苦しいだなんて。


深呼吸をして彼らに向き直った私は、彼女のご要望通り、今夜のふたりにふさわしいカクテルを作った。


その際、グラスを取ろうと手を伸ばした時に、何かをひっかけて落としてしまった。


床を見て、喉の奥がヒリヒリと痛くなった。


落ちていたのは、泰兄にあげようと思っていたチョコの小箱。


リボン代わりの小さな白い造花が歪んでいた。


バカみたい…!


私はゆっくり細いヒールを小箱の上に置くと、体重をかけた。


音も立てずに潰れる小箱。


私は何度も何度も踏んだ。


膨らんでいた期待を潰すように、何度も。


壊れた箱と潰された想い…


そしてバカな私。




< 92 / 411 >

この作品をシェア

pagetop