ふたり。-Triangle Love の果てに
「おまえはいい女だ。これほどの女はなかなかいない」
私は彼をにらみつけた。
「おまえがその気になれば、大抵の男なら夢中になるだろう」
あなたは…?
あなたはその「大抵」の中に入る?
彼は口元を緩めた。
「俺があの女と寝る、それを妬いてくれてるものだとばかり思っていたが、違ったか」
ゆっくりと私の髪から手を引く泰兄。
「おまえの言うように、ただのうぬぼれだったのかもしれないな」
そんな言い方しないで。
じゃないとまた誤解しちゃうわよ、私。
自嘲気味に笑うと、彼は背を向けて歩き出した。
「泰兄」
待って!
私、本当はあなたのこと…
わかってるくせに…
「おやすみ」
そう言いながら振り返ることなく、後ろ手に手を軽く振って通りを歩いていく。
ねぇ、どうしてあなたはいつもそんな言い方しかしてくれないの。
もっとストレートに伝えてくれたなら、私だってこの気持ちを包み隠さずに打ち明けることもできただろうに…
ううん、彼のせいばかりとは言い切れない。
私だって意地っ張り。
好きなのに、彼に拒絶されるのが怖くて気持ちを隠そうと必死だった。
隠しきれるものじゃなかったのに。
現に、彼は私の気持ちに気付いている。
「泰兄…」
冷たい風が「素直になればよかったのに」と、この頬を打った。