無口な彼が残業する理由 新装版

「なのに、お前は……」

ため息を交えた青木は、珍しく真剣な眼差しで私を見つめる。

いつもは気の抜けた顔をしているから、

こんなに整った顔をしてるなんて知らなかった。

「仕事にしか興味なさそうだし、かと思いきやいきなり恋に落ちたとか言い出すし」

「だって……」

仕方ないじゃない。

私だってそんなつもりなかった。

「どうせ俺なんて眼中にもないんだろう?」

「それはっ……」

確かに、そんな対象として見たことはなかった。

「だったら友達でいいやって思ってた。楽しく仕事できたらもうそれでいいやって思ってた。そしていつか俺がお前のこと見てるって、気付いてくれれば良いと思ってた」

語られる気持ちは私が配属してからの一年間を思い起こさせて、

じわり涙が目に溜まる。

「けど」

「……けど?」

「何か悔しくなったから、もう遠慮しないことにした」

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