無口な彼が残業する理由 新装版
「大丈夫だよ」
とは言いつつ、自覚した途端目覚めたように体が叫び出す。
「大丈夫って顔してない」
どんな顔してるんだろう。
目の前に広がる丸山くんの顔が、
私の脈に合わせて揺れる。
「待ってろ」
「え……?」
「いいから、待ってろ」
命令口調で言い付けて、
走って事務所に戻っていく。
一分と待たずして戻ってきた。
私からバッグを奪い、
「これ、着て」
と黒いジャケットを羽織らされる。
ふわり、キスしたときの涼しい香りに包まれた。
いつの間にか戻ってきていたエレベーター。
「行くぞ」
手を引かれて乗り込んだ。