無口な彼が残業する理由 新装版
エレベーターには何人か人がいたけれど、
まるで抱き締めるように丸山くんが支えてくれて、
それに甘えて頭を預けていたから何人乗っていたのかは見えなかった。
肩を抱かれてゆっくり駅へと向かう。
一歩一歩足を地面に付ける度に視界が揺れた。
帰宅ラッシュが始まった駅はガヤガヤしていて、
電車はすぐに来たけれど満員だ。
定時で帰るとこんなにも窮屈なのか。
丸山くんに引っ張られながら乗り込む。
自分の体で隙間を作って、その中に閉じ込めるように私を誘導してくれた。
腰に回された手。
青木とは違う感触がする。
私はまた頭を預け、視界は丸山くんの胸で覆われている。
自分の吐く息が、熱い。
「眠ってなよ」
キュッと腕が絞まる。
「支えとくから」
私は軽く頷いて、完全に丸山くんに身を預けた。