無口な彼が残業する理由 新装版
自宅の最寄り駅に着いた。
丸山くんに守られながら電車を降りて、
いつか相合い傘で歩いた道を行く。
しっかり手を繋いで、私が倒れたりしないように。
アパートに着くと、迷いもせず一緒にエレベーターに乗り込んだ。
「何階?」
「5」
「鍵、どこ?」
「中のポケット」
私のバッグを漁って鍵を取り出すと、
豪快な手つきで解錠し、有無を言わさず中に入ってくる。
掃除しとけばよかった、なんて思う余裕はなかった。
私をベッドに座らせて、
「辛いだろ」
と頭を撫でてくれる。
頷く元気もなかった私はそのまま横に倒れ込んだ。
ふわり、ジャケットから丸山くんの匂いがした。