無口な彼が残業する理由 新装版

シャツの裾をキュッと握ると、

やれやれ、という顔でギュッと抱き締められた。

温かい。

「すぐ、戻るから」

「ほんと?」

「そこのコンビニ行って、色々買ってくるだけだから」

ぽん、ぽん。

あやすように背中を撫でられた。

甘やかされているようで心地いい。

「じゃあ、ちゃんと着替えるんだぞ」

そう言い残して、丸山くんは私の部屋から出ていった。

途端に寂しくなる室内。

外はもう暗い。

丸山くんは、やっぱり優しかった。

憎い私なんかの世話を焼いてくれて、

涙が出てきた。

私は言い付け通りスカートとストッキングを脱いで、

部屋着に着替えて布団の中に潜り込む。



丸山くん、早く帰ってきて――……



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