無口な彼が残業する理由 新装版
「そう」
返ってきたのは短い相槌。
私は言葉を急かすように丸山くんを見つめる。
手にギュッと力が入っている。
汗をかいて気持ち悪い。
早く何か言ってよ――。
「話って、それだけ?」
ズキンと胸が痛んだ。
ツーンと涙腺が痛むけど、ここで泣いちゃいけないと思った。
「それ、だけ」
声を震わせないようにするだけでも力を使う。
「そう。じゃあ」
丸山くんは素早く私に背を向けた。