無口な彼が残業する理由 新装版
今日も一人また一人と去っていって、
事務所はだんだん静かになっていった。
企画案のまとめがキリのいいところに来て、伸びをしながら時計を見ると、
時刻は8時半を回ったところだった。
張り切りすぎて肩がガチガチだ。
周りを見渡すと、もう誰もいない。
……と思ったら、一人だけ。
丸山くんがいた。
「丸山くん」
呼び掛けてみると、パソコンのモニター越しに綺麗な顔がこちらを覗く。
「なに?」
小さな声が静かな事務所に響く。
また、二人きりだ……。