甘恋集め
その場にひっそりとあるベンチに二人並んで腰かけると、その瞬間からよみがえってくる記憶達。
「私、ここからあの屋根を見ながら幸せな気持ちになってた。
竜の事を覚えてなくて、それでも楽しく幸せな大学生活を送ってたけど。
あの屋根を見ないと気持ちが落ち着かなくて、切なくなって……」
竜とつないだ手に力を込めた。そして同じ力で握り返された。
その力に勇気づけられて、言葉をつないだ。
「あの緑いろの屋根を見ながら、気持ちを落ち着かせていたけど、それでもどうしてか泣きたくなってたの。でも……」
俯いて、言葉を選ぶ。どう言えば、うまく思いを伝えられるんだろう。
竜にわかってもらえるんだろう……。
そう考えると、気持ちがまとまらなくなって、竜に伝える言葉も浮かばない。
「うまく言えなくてもいいから」
俯く私を励ますように、竜の言葉が落とされた。
「うん……。あの、ね。私、ここからあの屋根を見ながら、幸せな気持ちを感じてたけど、いつも切なくなってた。胸の中を苦しくて重いものが占めてきて、身動き取れなくて呼吸もしにくくなってきて。
すごくつらくなるから、もう考えないようにしてたの。切なさの原因は何かって考えないようにしてたの」
じっと聞いてくれる竜の目を見ながら、一気に吐き出した。