甘恋集め
「それは、仕方ないだろ。梅は忘れたかったんだ、あの事を……」

つらそうな声が竜の口からこぼれる。

『あの事』それは私が侵入者に襲われた夜の事。それを思い出すと、やっぱり体が震えてくる。体温も下がる気がする。

「梅?大丈夫か?」

そんな私の変化に気付いた竜は、慌てて私をその胸に抱き寄せてくれた。
温かい胸に顔を埋めると、ほんの少し落ち着くけれど、それでも私の中にある申し訳なさが消えるわけでもないし、目をそらしていいわけじゃない。

「私、自分が苦しくて切なくてどうしようもなくなる気持ちに甘えて、すべてから逃げてた。
思い出すと、怖くて怖くてたまらなくてどうしようもなくなるから、思い出しそうになったら意識をそらして、何もかもから逃げたの。

……竜からも、逃げてた」

ごめんなさい。ごめんなさい。

竜の胸にしがみついて、何度も謝った。
謝っても、竜が苦しんできた何年もの悲しい時間を取り戻せるわけじゃないけれど。

「ごめんね、竜、思い出さなくて、ごめん」

謝るしか、できない。
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