コイン★悪い男の純情
 「勇太、ありがとう」


 かんなは勇太を抱き締めて、わんわんと涙を流した。
 泣いても泣いても、次から次に涙が流れた。

 
「信じていたのに」


 かんなは、淳也の裏切りを許せなかった。


 「ママ、お父ちゃんが今度来たら、僕がバットで頭を叩いたるから、泣くのはやめて」

 「勇太。ありがとう。違うのよ。違うのよ」


 かんなは、なおも泣き続けた。

 悔しくて、悔しくて、かんなは涙を流し続けた。


 「ママ、僕が守ったるから、泣かんとって」



 「ありがとう、勇太。うううううううううううううううっ~」



 川を氾濫した濁流のように、かんなの涙は激しく、激しく、頬を伝って滴り落ちた。




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