コイン★悪い男の純情
 前崎は、かんなの家の近くの道路脇に車を止めた。


 「勇太の奴、出てけえへんな」


 前崎は、いらいらしながら勇太を待っていた。



 1時間ほど経った。


 勇太が、バットを持ってこちらに向かって歩いて来る。


「あいつ、またあのバットを持ってやがる」
「勇太」


 「あっ、お父ちゃん、また来たな。こっちに来るな、また叩くぞ」


 勇太は、バットを両手で握り締めて身構えている。


 「おいおい、やめんかい。今日は前の埋め合わせに、これっ持って来てやったやないか」


 前崎は、車の窓からサッカーボールを勇太に見せた。

 「あっ、サッカーボールや」
 「欲しいやろ」


 前崎が、サッカーボールを勇太に見せびらかした。




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