コイン★悪い男の純情
 たえは目をぱちくりとして、はあっはあっと大きく息をしている。

 「殺してくれ」
と、先程言ったばかりなのに、その言葉とは違う驚いた表情をたえはしている。

 「勘弁しろよ。力が入り過ぎて」

 「びっ くり した なあ。死ぬ かと 思った わ」

 「殺す訳ないやろ」

 「あん まり 驚い たら、お腹 が すい たわ。何 か 食べ させ てえ な」

 「殺せの次は、お腹がすいたか。まいったな。ちょっと待ちや」
 「はよ して や」

 「ラーメンでもええか」
 「それ で 我慢 する わ」

 淳也はたえのためにラーメンを作った。

 余りの驚きで、たえはパニックから、やっと落ち着きを取り戻したようだ。

 淳也はそんなたえを見て、嬉しくて泣きながら、はしで麺をほぐしていた。


 ポトン。


 ポトン。


 ラーメンの中には淳也の涙がいっぱいに入っていた。

 
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