コイン★悪い男の純情
 1920年代のアメリカ。
上流社会の女を愛した男の野心と、純愛を描いた名作を、二人はソファーを並べて楽しんだ。

 「2作品を続けて見ると、興味深いし、良くわかりますね。私はめがねの看板が印象的でしたわ・・・」

 二人は1作目と2作目の違いや描き方について、長時間に亘って語り合った。そして、よく笑い、ワインの瓶を二人で空にした。

 「こんなに男の人と語り合ったのは初めてですわ」
 「僕もこんなに話が弾むとは思わなかったな。映画って本当にいいですね」

 そう言いながら、純一がショッピングバッグの中に手を入れた。

 「芳恵さんに、これをプレゼントします」

 「これは何ですの」

 「僕からのお礼です。開けて下さい」


 「何かしら。まあ、何て素敵なの。カメオのペンダント。頂いてもいいんですか」


 それは、花をモチーフにしたフランス製のカメオのペンダントだった。

 「これは僕のほんの気持ちばかりのお礼です。ぜひとも、受け取って下さい」
 「嬉しい!今日は何て素晴らしい日なの。このワインのようにとろけそうな一日でしたわ」

 「そんなに喜んでもらえれば、光栄です」
 「本当にありがとうございます」



 純一が帰り支度を終え、部屋を出ようとしていると、芳恵の粘り付くような視線に気が付いた。

 


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